君と計る距離のその先は…
1.突然のキス

 賑やかな居酒屋の座敷で職場の飲み会が開かれていた。

 トイレ前で順番待ちをしているとたまたま職場の先輩である橘さんと一緒になって会釈をする。
 短髪でガタイがよくて強面の橘さんはどうも苦手だ。

 ほんのり酔っている私はぼんやり壁に貼られたバイト募集の貼り紙を見ていた。

「真野って彼氏いるの?」

「……いません。」

 どんな質問…。
 私達ってそんな質問できるほど親しかったです?

 疑問が湧いて、その疑問は質問に変わることはなかった。

 ただ彼の呟いた声が聞こえた。

「なら俺と、付き合わないか?」

「へ?」

「嫌なら拒んで。」

 間抜けな声が漏れた私に色香漂う声で言われた。

 逃げられたのかもしれない。
 けれどまさか橘さんが。という驚きと、何より彼の色気に当てられて金縛りにあったように動けなかった。

 そうこうしているうちに橘さんは壁に腕をついて私を覗き込んだ。

 息をするように自然に、まるで惹きつけられるように、橘さんの唇が私の唇に触れた。

 え……。
 今、何が起きてるの?
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