風の見える所
「そう言えば愛子こそ最近けんちゃんと上手くいってんね。最長記録じゃない?」

愛子は珍しく恥ずかしそうな顔で言った。
「色々あったけど、乗り越えた幸せっての?それにあれから、けんに浮気封じしてるから」

桃は目を丸くした。

「えっ?なに?浮気封じって」

愛子は意味ありげにクスッと笑って、
「まだ処女の桃には内緒。彼とヤってからききなさい」

愛子は急に先生みたいな口調になった。

桃はそれからその(浮気封じ)が気になって気になって仕方がなくなった。

(タツミがけんみたいに他の女の子といい仲になったりしたら、私耐えられるんだろうか?)

胸が苦しくて頭の中がぐちゃぐちゃになった。

その日の放課後、桃の心臓はバクバクしていた。

(静まれっ!私の心臓)

タツミの家に向かい、汗ばんだ手でハンドルを握った。

桃は病院脇の坂を下ると、ほんの数ヶ月前に同じ様な気持ちで、この道を通った事を思い出した。

でもそれが今はずっと昔の夢の様に感じた。

その日初めて、桃は家の手伝いをサボった。

悪いなーと思いながら、
(今日は友達との勉強が長引いてます。遅くなりますごめんなさい)
とだけ母にメールをした。

(夜道は危ないから気をつけて帰ってくるんだよ)

少し時間が経って母から返信があった。


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