その笑顔、私のモノ
chapter5


***

漣に1週間待ってと言われてから、2日がたった。

とりあえず、何を隠しているのかが知りたくて、ずっと漣を見ていた。
今のところ、普通に仕事して、普通に生活している。
ただ、私と2人になると少し微妙な雰囲気になってギクシャクしている…。
仕事中はみんなの前でも普通に話しているから、そこは漣も私もさすがだと思う。
きっと、誰も私達がこんな気まずい関係になってるなんて、気が付かないだろうから。

家での会話は、するけどすごく不自然だ。
話しかけられると、私が適当に返事をして逃げるからなんだけど…。
だって、話しをしていたら自分の気持ちを隠しきれずに出してしまうかもしれない。

今だって…
家でご飯を食べ終わって、テレビを見ていると話しかけられた。


「彩子ちゃん、今日話していた企画もすごい良かったよ!」


仕事で提出した企画のことだ。
部長はもちろん、社長や専務にもプレゼンをして、通した企画だ。


「…あれは、別にみんなで考えたやつだから…。」


心の中では、褒められてすごく嬉しいのに、それを顔に出さないように素っ気なく言った。
みんなで考えたのは本当だけど、実は企画のリーダーを任せてもらえたやつだ。
だから本当は…“頑張って考えたやつだし、絶対に成功させたい。漣にそう言って貰えたら頑張れる!ありがとう。”とか言いたいのに…

気まずいまま、素直に可愛いことが言えない私は自分の言った言葉に後悔して、寝室に逃げた。

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