100日間、あふれるほどの「好き」を教えてくれたきみへ



「……あ」


お互いの指が鍵盤から離れて演奏が止まった。


俺がミスした。そして海月もミスした。

急に静かになってしまった音楽室と、いい感じだったのに同じところで間違えてしまったことが、なんだかとても可笑しくて。


「はは」

俺は声を出して笑う。


今は笑っておこう。笑い飛ばしてしまおう。


頭に浮かんだ不安も、ぜんぶ。



「もう一回やろう。次は上手くいく」


何度振り出しに戻っても、またやり直せばいい。


海月は小さく頷いて、再び鍵盤に手を添えた。


その横顔が綺麗で、どうにもこうにも、やっぱりすげえ綺麗で。


鍵盤を弾くたびに当たりそうになる肩も、触れ合えそうで触れ合えない指先も。

まだ認めないと、頑なに考えないようにしてたことが、どうでもよくなる。


海月がなにを抱えていても、なにを背負っていても、この先なにがあっても、変わらない。





俺は、海月が好きだ。


  

< 106 / 264 >

この作品をシェア

pagetop