100日間、あふれるほどの「好き」を教えてくれたきみへ



「大体あなたとはもう六年一緒に暮らしてるけど、ちっともなに考えてるか分からないのよ。でも結局、あなたの責任は私にある。なにかあった時に責められるのは私」

「は、晴江、飲み過ぎだよ」

「貴方は黙ってて!」

忠彦さんの制止を無視して、晴江さんは追加のワインを注目した。


周りのお客もじろじろとこっちを見てる。でも、晴江さんの口は止まらない。



「都合が悪くなるとすぐに口を閉じてなにも言わないところ。本当に姉さんとそっくり」


……ドクンッと、鼓動が激しくなる。



「でも最後にはどうせ自分ひとりじゃどうにもならなくなって図々しく頼るのよ。本当に姉さんは――」


「お母さん」

晴江さんの声を遮ったのは美波だった。



「楽しい外食なんだし、もうこの話は終わりにしよう。ね?」

晴江さんをなだめるように美波は笑顔を浮かべる。



「でも少し飲み過ぎだよ。お父さんは店員さんからお水もらって。私はその間にお手洗いにいってくるね。ほら、海月も行こう」


美波に久しぶりに呼ばれた名前。私は手を引かれるまま席を立って、美波と女子トイレの扉へと入った。

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