Forbidden Desire~秋風に舞う葉のように~


パタリ、床に落ちた一滴の雫を見たのか、颯人は俺の顔を覗き込んだ。


「あ~ぁ、ほんとに泣いてるよ」


呆れたような笑い顔で言う颯人はスッと手を伸ばし、俺の涙を指先で拭う。


「……触んなっ!!」


パシッと薄っぺらな音と共に颯人の手を払いのけた。


「痛いなぁ…、触るなって言えば触るし、こっちから触ってやれば触るな?ふっ、難しいな、お前」


ふざけるな!


心の中で叫んだ言葉を押し殺して、俺は颯人を睨みつけた。


近くにあるはずの彼の顔が、涙で滲んでよく見えない。


それでも、颯人が相変わらず唇に笑みを浮かべているのは分かった。


だけど…なんとなくだけど、その微笑みが先程までのヒトを見下したようなそれではなく、優しい笑顔のような、そんな気がしたのは……。


気のせいだろうか?





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