覚悟はいいか!【完結しました】



抱き締めている力が緩んだ
あぁ、本当に誠さんに触れられるのは最後なんだ


「優」


少し低めのいつも、拗ねた時の声だった
最後にこんな告白、重いよね
怒った?


「初めて優から好きって言ってくれたのに
なんで、過去形なんだよ………」


私を正面から見つめる瞳は揺れていた
縋りたくなる
別れたくない、行かないでって言いたくなる


「なんで、泣くんだよ?」


そっと、涙を拭ってくれる
最後にそんなに優しくしないで


「彼女のとこに、戻るんでしょ?
誠さんの幸せの、邪魔したくない………」


トラウマを抱えていた誠さん
きっと、あの様子だったら彼女も誠さんとヨリを戻したいんだとわかった


「俺の幸せってなに?
俺の幸せは優と一緒にいることだよ
一人で泣かせてごめんな
俺は優が大好きだよ
だから、過去形なんて使わないでくれよ」

「え………」


じゃあ、彼女は?
誠さんも手振り払わなかった

嫌じゃなかったからじゃないの?


「優………
確かになあの人は昔俺が付き合ってた人だよ
5年間女を抱けなくなった原因の人
急に現れて、正直真っ白になった
情けないけど、怖かった
優との幸せが消えてしまうような……
優を優先しないといけなかったに、ごめんな
あのあと、ごめん、あの人とホテルに行った」


チクッと胸が痛い
やっぱり、あの人と………
誠さんがあの人に触れたんだと思うと苦しくなる



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