Snow Doll ~離れていても君を~
「いや、聞いたことがないが。まあ、あいつなら彼女の一人や二人いるだろう」


先輩の言葉に納得した私は玄関まで春馬君を見送る。


「……やっぱり、俺に自由はないのかな」


春馬君らしくない、低く暗いつぶやきが微かに聞こえた。


「外は暗いから気をつけてね」


笑顔もなく小さくうなずいた春馬君。

玄関を出る後ろ姿は、どこか寂しそうにも見えた。





再びリビングに戻ると、何やら言い争う声がする。


「私が居間で雑魚寝なんてあり得ない」

「仕方ないだろ、ベッドはこの家には二つしかないんだから」

「嫌ならお前も帰ったらどうだ?」

「それは嫌、せっかくパジャマも持ってきたのに」

「……ケイ、どうしたの?」


私が後ろから尋ねると、ケイは勢いよく振り返った。


「あ、ユキ。良いところに。私、今夜はユキの部屋で一緒に寝させてもらうから」

「──はあ?」

「……えええっ!?」


海里の声と私の絶叫が重なった。
< 95 / 268 >

この作品をシェア

pagetop