あなたの大切な人の話
海から一本離れると、景色は変わり、民家もぽつぽつと見え始めました。
彼女はキョロキョロと落ち着かない様子です。

「あの、高速道路には乗るんですか?」

「はい。そのつもりですが」

あなたは来るときも高速道路を使っていますから、それは特段彼女のためではありませんでした。
しかし彼女は目を輝かせます。

「オープンカーで高速道路乗ると、どんな感じですか!?」

「……申し訳ないんですが、俺は高速道路ではルーフを閉めて走りますよ。ですから普通の車と同じです」

「え!」

彼女は真上を見上げました。そこにはもちろん今は屋根はないので、突き抜けた青空が広がっています。屋根の代わりに青空があることを、彼女はご機嫌のまま、しばらく眺めていました。

「ここに屋根ができるってことですか?あの黒いシートみたいな」

「この車はメタルトップなので……ええと、普通の車と同じです。自動で、ボディと同じ屋根が閉まります」

「ええ!すごい!」

「国道に出たら信号で停まったときに閉めますよ」

「な、何か手伝うことあります?」

「いえ、ボタンひとつで閉まるんで、大丈夫です」
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