怨返し─赦されない私の罪─
別れの時

竜と美苗との事件から数日、静華は依奈の家に訪問してきた。事前に連絡を貰い、静華から「何が起こってもいいよう心の準備をしておいて」と言われていた。
依奈はその言葉の真意は分からないが、ドキドキしながら夜を過ごした。

約束の時間ぴったりに家のインターホンが鳴る。依奈は深呼吸して心の鼓動を落ち着けると、玄関へ向かって静華を出迎えた。


花梨は古い友人と会う予定があるので、家は空けていた。リビングも使い放題だが、二人は依奈の部屋に向かった。
リビングが悪いという訳ではなかったが、静華との始まりの場所と思うと自然と足は向かっていった。

一週間半前と全く同じ感じに、静華と依奈は座り事前においてあったお茶を飲んだ。
だが、一週間半とは違って今は大事な話をする場、どことなく緊張感は漂っていた。


「さてと...色々と楽しくお話したい気持ちはあるけれど、早速本題に移ろうかしら?」


「え!?早くない?時間はまだまだあるのに....」


「この後一緒に服を見に行くんでしょ?そんな時にこの話が頭の中でチラついて楽しめないなんて私は嫌なの。」


依奈はそんな自分の姿を想像し、ぐうの音も出ずにしょんぼりとした。正直依奈の中では心の準備が出来ていない。出来るだけ先延ばしにするという依奈の計画はすぐに消え去った。
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