鳴らない電話を抱きしめて

聡の本音

「もう1回言うな? 俺、里緒と別れる気は無いから。」

じっと見つめられ、私は思わず目を逸らして

「何言ってんの?そんな勝手な事言って、私とは会わないくせに、他の女の人とはデートしてるじゃない!」

と告げると、

「は?何言ってんの?」

と眉を寄せて聡は反論してくる。

「とぼけないで!!私見たんだからね。綺麗な女の人と腕組んで、仲良く駅前でデートしてたじゃない!」

「いつの話だよ!」

「1ヶ月前の日曜日だよ。」

悪びれる事も無い聡に腹が立ち、私は声を大きくした。

「は?日曜?……」

少し考える仕草をした聡は、ハッとしたように目を見開いて私を見た後、

「ごめん。」

と小さく謝った。

「もういいよ。聡はその人が好きなんでしょ?だから、私の事は忘れていいから…「違う!!別にあれは好きとかじゃなくて…仕事だから……」」

「仕事?」

尋ねる私に聡は意を決した様に話し出した。

「俺さ、今一人暮らししてるんだよ。アパートでさ。」

「うん」

「親に仕送りはしてもらってるんだけど、俺自炊とか出来ないから、当然コンビニとかで飯買ったり外食したりなんだけど、そうすると金かかるだろ?でも親に仕送り足りないとか言えなくて…だから、バイトしてるんだ。」

私は黙って聞いていた。

「俺…レンタル彼氏のバイトしてる。」

「レンタル彼氏?」

「相手の女が金払って、俺達男のキャストとデートする。時間で幾らとか決まっててさ。」
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