キミに伝えたい言葉がある



「お疲れ様、かっこよかったよ」
「・・・さんきゅ」


そう言って笑う莉桜菜は、どこか元気がないように見える。


「吉田君ってすごいんだね!」


莉桜菜の側に座っていた女子が話し掛けてくる。
俺は、その女子の方は見ないで、莉桜菜の隣に座った。


「どうしたの?」


莉桜菜は、首を傾けた。


「体調、悪いのか?」
「え?」
「なんか、元気ないように見える」


倒れてから時間は経っているけど、やっぱり本調子じゃないのではないか。
保健室に行った方がいい気がするのは俺だけだろうか。


「そうかな?私、元気だよ?」


莉桜菜は、笑みを浮かべるが、やはりその笑みはいつもの元気は見られない。
隣に座っているのは莉桜菜の友人なんじゃないのか。
友だちが調子悪そうなのが分からないのか。
少し、苛立ちを覚えた。


「真司君?大丈夫よ?私は元気!」


莉桜菜が言った次の瞬間、アナウンスが鳴った。


『プログラム5番、障害物競走に出る選手のみなさんは、入場門にお集まりください。繰り返します・・・』


「あ、私の出番だ!」


莉桜菜は、立ち上がると自分の膝に置いていたタオルを椅子の上に置いて、俺を見下ろす。
今度は、俺が見上げる形になった。


「行ってくるね」
「・・・あぁ」
「莉桜菜ーいってらっしゃーい」
「いってきまーす」


莉桜菜は、友だちに手を振ると、入場門の方に行ってしまった。
俺は、その背中を見送った後、大きくため息をついた。

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