breath
私が言いかけると、専務はニヤって笑い

「樹は詰めが甘いから、あまり期待しないほうがいい」

と言う

その時の私は、その専務のお言葉に頭の中が『????』だった

私と樹さんの前に立ちはだかる物は、そんなに強敵だとも思っていなかった

あの二人は、私達が出会う前に別れていたのだから……

今は言葉の行き違いだけだと思っていた

ただ今の私は専務の部下で、これ以上歯向かうことも出来ず、素直に『はい、わかりました』と言うしかできなかった

その後は、樹さんの話はなく業務に入る

私は朝から溝口室長の業務を覚えるのが精一杯で、プライベートのことを考える余地は一切なかった

仕事を覚えるのは大変だけど、秘書業務が私に合ってるなと思ってしまう。もっと覚えたい、極めたい……樹さんとの結婚はもうちょっと後でもいいか……なんて余裕なことを思ってしまう私

楽観的で我儘な奴だと思う

たぶん、この余裕の感情は樹さんとの関係が円滑に進んでいると思い込んでいる、私のエゴ。
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