breath
23
次の日の始発の新幹線に乗るため樹は、朝食も取らずに行ってしまう
『今度の週末に迎えにくるから荷物をまとめて行くように』
おでこに触れるだけのキスの余韻を残して
スーツケース一つで来たから荷物も少なくまとめるのは容易い
伯父さんに何て言う?
『婚約者が迎えに来たから仕事を辞めます』
そんな事を言ったらせっかく雇ってくれたのに無責任で我儘すぎる
繁忙期のお正月だけでも出勤して今のシフトが終わってから辞めたい
こんなに簡単に帰ってしまうなんて、社会人として情けない
樹が帰る前に『入籍に必要な戸籍を用意しておくように』って言ってたっけ
それよりも、まずお父さんに連絡を取らなければ
樹がここに来た過程とかこれからの事とか確認しなければいけない
お父さんが伯父さんに何を頼んだのか?
その内容も知りたい
朝一でお父さんに昨日樹が来た旨と、何時に電話をして良いかの伺いのメッセージを送る
その後すぐに着信
『樹に私の居場所を教えたの?』という問いには『していない』
ただ樹も真剣に探したいと言っていたので引き留めたけど、それ以上のことは言えなかったとも
プロポーズを受けてしまった事
樹は週末に迎えに来るといっているけど、仕事のはどうしたら良いのか?
聞いてみると電話の向こうのお父さんは笑っていて、昨日の件は伯父さんから電話で聞いていたとか
仕事はもう伯父さんと話しているから戻ってこいと言われた
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