大事にされたいのは君

「今の俺なら吉岡さん達の力になれるでしょ?次の俺は二人共養うくらい甲斐性のある男になる予定だから乞うご期待」

「……」

ニコニコとご機嫌な瀬良君。私に過去を教えてくれた彼は、本当に私が彼の内側に踏み入る事を認めてくれたのだろう。どうやら兄と二人で、二人だけの秘密にするつもりは無かったらしい。私が聞くタイミングを逃していただけの事だったらしい。確かに、この話は兄から私にする話でも無く、聞かれていない瀬良君が自ら口にするような話でも無く、結局あれから変に勘ぐって話題に出さないでいた私がいけなかった。そう、またしても悪いのは私。私が悪い。

…でもまだ治らない。また新たに大きくなったモヤっとが一つ。

「なんでそんなに背負おうとするの?」

私の問いに、瀬良君は雰囲気を落ち着かせてから一呼吸おいた後、「背負う?」と首を傾げた。

「今家事を手伝ってくれてるのもそうだけど、別にうちの家全部に関わってくれなくてもいいんだよ。兄なんて放っておいていいの」

「いやでもやりたくてやってるし」

「なんで?お兄ちゃんの事は私がやるからいいし、お兄ちゃんに気を遣う事なんてないよ。お兄ちゃんはもう充分大人なんだから勝手にやるし、そんな先まで面倒見る気持ちでいなくたって、」

「でも俺は龍介さん好きだから、ずっと先まで関わっていたいよ。吉岡さんともそう」

ーー龍介さん、吉岡さん。
あぁ、これだ。私のモヤモヤしていた原因がようやく見つかった。

「どうせ瀬良君は私よりお兄ちゃんの方が好きなんだ」

「は?」と、口を開いたまま固まる瀬良君が視界に飛び込んできたけれど、関係ない。

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