大事にされたいのは君
君は恋人

君の想いを守る



すっかり互いを線の内側に入れ込んだ関係になった自覚がある。

お互いの家を往き来し、ほとんどがうちに入り浸るようになった瀬良君はもう私の家族も同然だった。互いの一番弱くて柔らかい所を曝け出し、受け入れ合った。足りない部分が似ていたのだ。その部分を互いが持っていた、ただそれだけの事でも、彼にとってそれが私でなくてはならない理由ならば、それは私の自信へと変わった。彼にとって私は必要で、私の代わりはいないのだと心から思えるようになったのだ。…だからだろうか。

あの時あれだけ気になって仕方なかった彼の友人関係ーー特に女子との交流が、今では何も気にならなくなった。…例え目の前で彼の背中にべったりと抱きつく女子が居たとしても。

「…流石にあれはダメでしょ」

朋花ちゃんが目の奥に暗いものを鋭く光らせながら言う。私達の関係を知った朋花ちゃんは、「やっとか」と、何故か安堵の表情を浮かべながら受け入れてくれた。それから瀬良君に私との事をきちんと他の友達にも説明しているのかとしつこいくらいに問い質し、それだけは絶対に忘れるなと口を酸っぱくして言い聞かせた。その結果、今では私達が付き合っている事実を知らぬ者は居ない世界が出来上がった。本当にあっという間の出来事だった。

「分かっててやってるよあれは。それでも許すの?由梨ちゃんは!」

怒り心頭の様子で朋花ちゃんは、私と瀬良君にくっつく彼女とを交互に見やりながら言う。許す…許すっていうか、

「別に、気にしないかな」

「なんで!!」

「なんでって…だって、瀬良君の気持ちの問題だし…」

そう。彼女がどれだけ瀬良君を好きだとしても、瀬良君の特別になりたがったとしても、瀬良君がそれを受け入れる事は無い。彼女を受け入れるかどうかは瀬良君が決める事で、彼がそういう意味で受け入れない事を私は知っている。

「瀬良君の友達関係にまで口出ししないよ。みんなの瀬良君だし、瀬良君だってみんなが好きなんだから」

「……」


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