大事にされたいのは君

「私もそう思う!」

思わず乗り出して答えていた。だって嬉しい。朋花ちゃんは瀬良君に対してそう思うタイプの人だったのだ。それは瀬良君と深く知り合う前の私と同じ考え方で、つまり私と朋花ちゃんの対人関係への感性は同じだと言う事で、

「朋花ちゃんの言う通り、私も深くまで関わりたくないと思ってたからすごく分かるし、安心した」

私の話を朋花ちゃんはきちんと分かってくれる人、私と同じ人。そう理解した瞬間、急に私の中での彼女との距離が縮まった。

私は今まで朋花ちゃんに絶対超えられない壁のようなものを感じていた。それはきっと、私と正反対な彼女に対して憧れると共に卑屈になっていた私が引いた線のようなものだった。部活に全力で取り組む彼女、教室以外に居場所がある彼女、全てを曝け出せる気の置けない友人が何人も居る彼女、私よりも教室に居ないはずなのに私よりも馴染んでいる彼女…挙げだしたらキリがない。分けるとしたら私のような寂しい人間より、瀬良君の周りの人達と同じタイプの人…そんな風に思っていた。

彼女は素敵な友人だった。そんな彼女が私と居てくれる事が嬉しかった。でもなんで私なのだろうと思う気持ちがいつもどこかに存在した。彼女の一番親しい人は私では無いし、私にどこまで心を開いてくれているのかも分からない。私の事を認めてくれていないのかもしれないと…彼女には、全てを曝け出す事が出来なかった。だから相談出来なかったーーそれが真実であった。

「実はね、付き合う前から瀬良君とはちょっとした約束があってーー」

だから、彼女に話そうと思った。今まで隠していた訳では無いけれど、話そうともしてこなかった全てを。私と彼のこれまでの馴れ初め、私の情けない過去、私の家族関係…彼と付き合う事になった理由を説明する為に必要なもの全て、今ここで話す事にした。やっと私の中で彼女と私を隔てていた壁が崩れ去ったのだ。

粗方全てを話し終えると、朋花ちゃんは私をジッと見つめて相槌を打っていたその顔を、そっと俯かせた。

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