大事にされたいのは君

「…なんて無責任な言葉……」

過去の他人事で背中を押す言葉を述べていた自分に後悔した。なるほど、客観的に話しているといざそれが自分になった時に痛い目みる事もあるのか…完全に言質を取られて退路を断たれている。

「うんまぁ、そんな考え過ぎないでよ。お互い良い距離感で寂しさを埋め合えないかなぁくらいで思ってるだけだから」

「…良い距離感?」

「そ。俺は吉岡さんを大事にする。吉岡さんは寂しい時に一番に俺を使う。そうすれば吉岡さんの満たされない時に俺が助けられるし、俺は俺で今一番気になってる子と仲良くなれんのも頼られんのも嬉しいしで良い事尽くし。な?それってすげー良い考えじゃない?」

吉岡さんを利用するつもりはないけど、俺の事は利用して良いよ。利用してよ。寂しいもん同士寄り添っていこうーーなんて、彼は笑って言った。

どこまで本気なのか分からないけれど、言っている事とは裏腹に、その笑顔は後ろめたい事は何一つないとでもいうように清々しく、ついていけば間違いないと確証を持てるような、彼独特の強さに惹き寄せられてーー思わず、その輝かしさに流された。流されて、少し考えさせてと答えてしまった。もしかしたらそこは暖かい場所なんじゃないか…なんて、少しだけ期待している自分が心の隅に居る事には、気づかない振りをした。




< 16 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop