秘/恋
……さん……



電車を一度乗り換えて、学校からひたすら逆走。

新幹線と並走するオレンジの電車は、どこまでも走り続ける。

通勤通学ラッシュの山を越えた車内は閑散として、のどかな空気。

あたしたちは独占状態の座席に腰を下ろし、それでも手をつないでいた。


「海が見たい」


ゆるく絡めた指を意識しながら、あたしはつぶやく。

とくとくと、弾んだ鼓動。

おなじだけ跳ねるこころ。

言葉よりも、重ねた肌のほうが伝わる気がした。

電車に乗ったときは、罪悪感でいっぱいだった。

だけど車窓の景色が移り変わるにつれ、さらさらと暗い気持ちは崩れ、いまは小さな塊しか残っていない。

この解放感で、隣にいる明良の隅々にまで染め上げたかった。

【しあわせ】を、半分ずつ分け合いたかった。


――名残の塊が決して、溶けることはないとわかっていても。



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