秘/恋



お皿をゆすいで
じいさま自慢の食洗機に並べる。

じいさまは孫の手腕より
愛機の性能を信じているから
汚れが残らないように
慎重に食器を並べていく。


じいさまがひとり、いないだけなのに
家のなかの空気は
いやにしんと、
静まりかえっていて。


……なんだか、息苦しい。



「そうか。はじめて……なんだ」



いまさら、気付く。


高校に入ってから


いまのぎこちない関係に
なってから


はじめて


ふたりきりで過ごす夜。



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