秘/恋
「……なんであんた、ここにいるの?」
嬉しいとか、哀しいとかを飛び越えて、息が詰まって。
乾いた、掠れた声が、喉から漏れた。
あたしの声に反応して、明良の眉間にシワが寄る。
表情を押し殺した真っ白な顔に、くっきりと谷間が刻まれる。
「毎日の習慣、そう簡単に変えないっつの。
なのにあんた、無造作に俺を置いていきやがって」
「あ……」
一方、あたしのすぐ傍に立つ樹也は、余裕があるみたい。
軽い調子で、あたしを責めてくる。
「ずっとあたしたちを追い掛けて来たワケ?!
バカじゃないの、あんた」
「うっわ、ひでえ云いぐさ。
でも、バカでもなんでもいいや」
つぶやいて、樹也はにまっと笑った。
「あんた、いま、俺を呼んだろ?」