秘/恋
ワケのわからないことをくちずさみながら
なぎは携帯に耳を傾けている。
「出ないなあ……あのバカ。
あ! 出た! 遅い!
なにボケボケしてるのよ!」
声のトーンをガラリと変えて
なぎが怒鳴りまくる。
女王さまちっくな高飛車な声。
ちょっと驚いた。
「いまから、五分以内!
五種類、違ういちごみるくとカフェラテ、買って来て!」
「……なぎ?」
云うだけ云って
なぎは無造作に電話を切ってしまう。
あたしはぽかんと
取り残されたかたち。
ただ呆然と
口を開けている。