秘/恋


ワケのわからないことをくちずさみながら
なぎは携帯に耳を傾けている。


「出ないなあ……あのバカ。
あ! 出た! 遅い!
なにボケボケしてるのよ!」

声のトーンをガラリと変えて
なぎが怒鳴りまくる。

女王さまちっくな高飛車な声。

ちょっと驚いた。


「いまから、五分以内!
五種類、違ういちごみるくとカフェラテ、買って来て!」

「……なぎ?」


云うだけ云って
なぎは無造作に電話を切ってしまう。

あたしはぽかんと
取り残されたかたち。

ただ呆然と
口を開けている。



< 31 / 219 >

この作品をシェア

pagetop