恋・愛至上命令。
次の朝。本条さんに、家族も喜んでいたとタルトのお礼をあらたまって言われた。行き場があって助かったのはこっちだったし、かえってくすぐったい。

会社に向う途中、信号待ちで不意に彼に話しかけられた。

「そう言えばウチの娘達がインスタ映えするとかで、お嬢からの頂きものを写真に撮ってましてね。なかなか綺麗に映ってるんで、見てやってもらえませんか」

そう言って斜めに振り返り、後ろに座ってるわたしにスマホごと渡してくれる。

そこには、HAPPY BIRTHDAYのプレートもそのままに、小さなロウソクが見栄えよく立てられた、ちょっと幻想的な雰囲気のフルーツタルトの画像が。周囲を暗くして撮ったらしく、ロウソクの焔が柔らかく写り込んで、まるでスイーツ店の広告に使えそうな出来栄えだった。

「ほんと上手に撮れてる。貰ってもらった甲斐があって良かった」

素直に感嘆して笑みを零しながらスマホを返す。すると。

「でしょう? なもんで、ついでに大島にも送っときました。きっとお嬢の気持ちは伝わってると思いますよ」

ルームミラー越しに、口角を上げニヒルに笑う本条さん。思わず目を瞬かせてるわたしに、更についでみたいに付け足す。

「実は、大島が世話になってる支倉(はせくら)組なんですが、個人的な知り合いがいましてね。何かあればずぐに報せてもらえるんで、余分な心配は無用ですよ、お嬢」
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