恋・愛至上命令。
お化粧と身支度を済ませてリビングに戻れば。上着を羽織ったスーツ姿の凪がもうスタンバってる。
仕事の行き帰りは基本、凪の車の送迎付き。電車通勤が出来ない距離でもないのに、そこは絶対に譲ってくれない。・・・寄り道をしながら帰るとか、ちょっと憧れだったのに。



凪と一緒に住んでるマンションから、わたしの職場までは車で約25分。8時40分出社だから、余裕を見て8時ちょっと過ぎには出る。
ちなみに。2LDKのこの賃貸マンションには、短大を卒業して今の職場に就職が決まった21歳の春から。凪を連れて行くのを条件に、両親に許してもらった。今年で3年目に突入してる。

車のウィンドウを少し下げて、風を入れながら走る。秋めいた涼やかさが心地いい。澄み渡った空もずい分高く見えて。こんなお出かけ日和に仕事かぁ。つい独り言。

「休むなら連絡を入れますが」

凪が運転しながら淡々と。冗談でも『うん』て返事したら即実行される。
仕事が早くて有能だものね、凪は。

「帰りはいつもの時間ですか?」
 
「たぶん大丈夫。何かあったらライン入れるから」

「承知しました。・・・行ってらっしゃい嬢さん」

「うん。行ってきます、凪」

車の外から小さく手を振ると、目礼が返った。わたしが建物の中に入るまで、そこを動かないのも知ってる。

エントランスの自動ドアをくぐる前に、もう一度振り返る。運転席の凪のシルエットだけ目に映して。また背中を向けた。





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