恋・愛至上命令。
「凪には言っておきたかっただけです。・・・簡単にいかないのは分かってるから」

言い聞かせるみたいに呟く。
すると、頬に触れていた指がそのまま顎まで下りて、やんわりと上を向かせられた。

「セリ」

間近にあった息を呑むほど綺麗な顔。見つめられてる眸にまるで金縛りにされたみたいで、動けない。

「男には棄てたくても捨てられないものがある。それは矜持だったり、信念だったりするものだ。・・・酷なことを言うけど彼は。セリの為に死ねても、愛を受け容れたりはしないよ」

真剣な表情とアキラさんの深い声が。もっとわたしを絡め取っていく。気がした。

「でもセリは決めたんだろ? 止めはしないよ。ただ独りで傷付かせておくなんて、俺には出来ないからね。慰めて優しく泣かせるのは、これからも俺の役目だよ」

だってそんなの。顔を歪めて。顎の下を捕らえられながら嫌々をするみたいに。 

「駄目です・・・それじゃ」

「・・・いいんだよセリ。寄りかかる場所があるのは弱さとは違う。羽根を休めて傷を癒して、そこからまた飛び立つ為に必要なんだよ。次はもっと飛べるようにね」

アキラさんは包み込むように言って、優しく微笑んだ。
胸がきゅっと締め付けられて、どうしていいか自分でも判らなくなる。

「わたし・・・アキラさんには何も」

何も求めないって言ったアキラさん。
どうしてそこまでしてくれるの・・・?

「・・・そうだね。でも愛し方なんて・・・人それぞれだ。セリも彼も、俺も」

言いながら、ゆっくりとアキラさんがわたしに体重をかけ。ソファにやんわり仰向けにされる。

顔が寄せられて唇が啄ばまれる。舌先でこじ開けられ、いつの間にか口の中がいっぱいに埋め尽くされて。やがて躰中、アキラさんの熱に覆われてく。

凪はわたしを受け容れない。・・・その言葉が棘になって刺さってた。 
揺さぶられるたび、熔かされてくのか痛むのか曖昧になって。


「・・・俺はいつでも、セリの傍にいてあげるよ」

アキラさんの柔らかいキスに惑いながら抗えないのを。
どこか許してる・・・自分がいた。



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