君を借りてもいいですか?
「白石さん?…どうされたんですか?」

本を借りるような感じではなさそうに白石さんは私に笑顔を向けていた。

「借りに来たんです」

「は、はい。では借りる本をお出し––」

「君を借りに来たんです」

「えええええ?!」

横にいた同僚はもちろん、本を借りたり返却するために並んでる人、そしてその周りにいた人全員の注目を浴びることになってしまった。

「な、何冗談言ってるんですか?」

突然の大注目に嫌な汗が出てくる。それなのに言った当の本人は焦りなど見せず堂々とした態度で私を見ている。

するとそんな私達を見かねた先輩が「休憩行っといで」と仕事を代わってくれた。

「こっちに来てください」

睨みつけるように強い口調で外を指差し、私は白石さんと共に図書館の横にある大きな公園へと移動した。
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