君を借りてもいいですか?
だがそんな幸せオーラに包まれながらも話題の矛先がなぜか私に向けられてしまった。

最初に言ったのは圭子だ。

「ってことはさ〜。この中で一人って栞だけ?」

圭子の指摘に他の2人の視線が私に……

「え?でも彼氏ぐらいいるでしょ?」

香代が当たり前だと言わんばかりに尋ねるが、どうして私に彼がいると思うのか不思議だ。

「え?いないけど」
と遠慮がちに答えるとみんなが目を丸くしながら『えーー?』と驚く。

彼氏がいないことがそんなに驚くことなの?

「そんなに驚かないでよ」

「いや、驚くでしょ。わかってる?私たち再来年30だよ」

そんなことは十分わかってる。

「ねーねー。うちの旦那に頼んで知り合いで年齢の近い人紹介してもらおうか?」

「だったら私も旦那に聞いてみようか?」

「私も…年下でよかったら彼に聞いて見るよ」

な、なんなんだ?みんなして紹介、紹介って……

なに?私に彼氏がいないことがそんなにかわいそうなの?

私、織田栞(おだしおり)は図書館で働く28歳。
ただ今、彼氏がいないことで親友たちから同情の目を向けられているところ。

だが私は言いたい。

一人の何がいけないの?一人だとかわいそうなの?惨めったらしく見えるの?

彼氏や結婚している人の方がおひとりさまより幸福度が高いって言うの?
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