突然婚⁉︎ 〜きみの夫になってあげます〜

「……櫻子さん、僕はきみの『夫』になるんだからね。やっぱり『名字呼び』は不自然じゃない?」

わたしは、うっ、と詰まって、飲んでいたコーヒーで()せそうになった。

「僕も『妻』であるきみを、いつまでも『さん付け』するのもね。
……これからは、『櫻子』って呼ぶからね」

きっぱりと、宣言されてしまった。

「では……わたしは……し…『慎一さん』ですか?」

こっ恥ずかしさを振り切って、決死の覚悟で口にした。

なのに……

「うーん……いいけど……でも、やっぱり、その呼び方じゃあ、『新婚さん感』が出ないなぁ」

……なんですか?「新婚さん感」って?

それに、わたしたちのような関係に「新婚さん感」なんて、必要なんでしょうか!?

「そうだなぁ……『シンちゃん』とでも呼んでもらおうか」

葛城さんはこともなげに言った。

「うん、なかなか『新婚さん感』が出てていいかも。きっと、ご近所のみなさんも、僕たちが本当の『夫婦』だと思ってくれるよ」

「し…シンちゃんっ!?」

わたしは思わず叫んでしまった。
声が裏返ってひっくり返っていた。

「うん、いいねぇ……でも、ちょっと激しいかな?もう少し、穏やかでやさしめな感じで呼んでくれたらバッチリだよ」

……いやいやいや。思わず叫んでしまっただけで、別にあなたのことを呼んだわけではないので。

わたしは恥ずかしさのあまり、俯いてしまう。

すると……

「櫻子……」

やさしい声で呼ばれて、あわてて顔を上げると……

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