今日も今日とて、告りますのでご覚悟を。


キャメル色の背中は、また私から離れて行った。

いつの間にか、空はオレンジ色に染まっている。

もう随分寂しくなった木々の葉がゆらゆら揺れ落ち地面に折り重なる。今日の別れを刻む音。

『俺を誤解しているな』

ふと、彼の言葉が頭の中でリプレイされた。

確かに私は彼を誤解していたのかもしれない、何も分かっていなくて、何も知らないだけなのかもしれない。幻想や憧れに取り憑かれているだけかもしれない。

それでも――――。

柔らかい風が包み込むように、私の体を押した。


「このまま好きでいてもいいですか?」


力の限り叫んだ言葉は、風に乗って彼の耳に届いたようだ。

足を止めた水瀬さんは、ゆっくりこちらを振り向いた。


「青い月だって待っていれば、いつか空に輝く日が来ます」


”月が綺麗ですね”

”それなら青くないな”


「……調べたのか?」

「私、水瀬さんのことが好きです。どうしても好きです。だから、諦めません。いつか振り向いてくれるまで好きだって言い続けますから、その気持ちだけは受け止めてくれませんか?」


精一杯の告白。

精一杯に真剣で精一杯に必死で、精一杯に不器用な告白。

そんな私の告白に、水瀬さんは苦笑いをして。


「もう、受け止めてる」


と、答えた。

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