王子様とブーランジェール



『やだー!竜堂くん、大丈夫ー?』


『いや…あの…はい…』


何杯飲んだか、わからない。

途中、水割りとかワインだとかも出てきた。


頭の中も、視界もぐらぐら。

歩くとフラフラする。



店を出て、先輩たちの後を着いて歩くが。

…あれ、何で先輩たちに追い付かないんだろう。

真っ直ぐ歩けない。

途中、立ち止まってしゃがみこんでしまった。


『竜堂くん、大丈夫?飲み過ぎちゃったね!』

気付くと、嵐さんが横にいた。

一緒にしゃがみ込んで、俺の背中をさすっている。


『だらしねえな竜堂。もうダメか』

だらしねえなって、あんな量飲んで平気でいられる方がおかしいだろうが。

そう言って、大河原さんは俺の手を引き上げようとした。


だが、しかし。


『…しっ!触らないで!』

『ええっ!』


嵐さんが大河原さんの手を払いのけた。



『竜堂くん、酔い冷めるまで、どこかで休もうねー?私が連れてってあげる』



そう言って、俺の手を引き上げたのは、嵐さん!



『おいおい嵐。おまえ一人ってか』

『うるさいわね!来るんじゃないわよ?あんたたちはもう用済みよ!…竜堂くん、さぁ行こー?』




え、ちょっとちょっと!




とは、酔い潰れた俺には反論できず。

嵐さんに連れて行かれるがままとなる。

せ、先輩ー!



吉原さんが、『竜堂、テイクアウトされた』と、つぶやいていた。


て、テイクアウトって!




そうして、俺は嵐さんに近くのラブホテルへと連れて行かれる。

先程の胸の谷間がチラつき、下着姿の彼女に抱きつかれてキスをされたら、見事にスイッチが入った。








「…で、やっちまったワケか」



俺の話を聞いた理人は、顔をひきつらせて苦笑いしている。

散々俺をからかい、去っていった咲哉たちがいなくなった後、理人に事情を説明していた。



「ハメられた…」




先輩に騙されて、呼び出されて。

散々飲まされて酔い潰され。

挙げ句に果てに、ホテルに連れていかれた…。




「…ハメられたんじゃなくて、夏輝がハメたんだろ?ホテルで、三年の女子を」

「……」

下ネタをあっさりと言うな。



あぁーっ!もう!

何てことだ!

今さらやってしまったもんは仕方ないのだけど。

悔やまれる…。



好きでもない女の子と、こんなことになるなんて。



頭を抱えて、机に顔を伏せる。

これは、今の俺にとっては、大失態なのだ。

片想い中の俺にとっては。


すると、理人が一言。


「夏輝こそ学習しねえな。酒によるこういうパターンの失態、これで何回目?」

「5回目…」


実は、こういうの、初めてじゃない。

過去1、2年でことごとく…!


酒を飲むと、ダメなのだ。

何て言うか…こう理性が無くなってしまうというか。


「学習しねえなとか、桃李のこと言えないんじゃねえの?」

「……」


そう言われると、何も言えない。


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