王子様とブーランジェール




「何?俺、バリケードなわけ?」



理人は俺の言うとおりにして、前を向いた。




「何も聞くな。何も聞かないでくれ」

「聞かなくても何だかはわかってるつもりだけど」

「じゃあ聞くな」

「何も聞いてないし」



そう言って、理人の背中に身を隠し続ける。

だが、怖いもの見たさっていうのは、誰にでもあり。

前方確認のため、理人の右肩からひょっこりと顔を出す。

すると、前の席に座っている桃李の姿が…!

髪が、髪がライオン丸じゃない!

サラッサラのストレートになっている!

頭小さくなってる!

…ダメだダメだ!見ていられない!

再び顔を伏せて速やかに身を隠す。

また、やり場のない思いを込めて、今度は左手で、理人の左肩をおもいっきり握った。

両手ともプルプルいってる。



「痛い痛い痛い痛い…俺の肩崩壊する。やめてやめてやめて…」

「ダメだダメだダメだ…やられるやられる…」

「ついでに俺の肩からひょっこりさんもやめてやめてやめて…痛い痛い痛い…」

きのこカットに黒丸眼鏡じゃないわ!



理人、おまえの両肩が崩壊する前に!

恐らく、俺のメンタルが崩壊する!

このままじゃ…俺のメンタル、やられる!




眼鏡とライオン丸ヘアーという、兜をはずし。

ゆるゆるオーバーサイズの制服という、鎧を脱ぎ捨ててしまった今。

桃李の本当の姿が、露となってしまった。

…かわいすぎる姿が、表に出てしまった!




俺は、この桃李の本当の姿を知っていた。

桃李は、俺の双子の姉・秋緒とは親友ばりに仲良しで、昔はよく我が家に泊まりにきていた。

その時に何度か目撃したことがある。

風呂上がりに眼鏡を外しており、脱衣室の棚におもいっきり突っ込んでいたり、廊下でおもいっきりすっ転んでいたが…。





つまり、何が言いたいのかのいうと。

とにかく、桃李のその姿はかわいい。

かわいすぎて、直視できない。

かわいすぎて、どうしていいかわからない…!



今までは、その眼鏡とライオン丸ヘアーで、表情が隠れていた。

インパクトもあるし、何せ表情のひとつひとつがわかりづらい。

この兜の防御力はたいしたもんだ。



しかし、それが無くなってしまった今。



かわいすぎる表情や仕草が、ダイレクトに視覚にはっきりと見えてしまう。

それは、俺のメンタルを揺さぶり、動揺を誘う。

あまりにも、かわいすぎて、かわいすぎて、俺自身がおかしくなるに違いない。

脳内、ぶっ壊れてしまう…!



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