王子様とブーランジェール




成長と変化を恐れずに。

それを全部受け入れる、という『覚悟』が必要なのだということもわかった。




隣、気持ち一歩後ろを歩いている桃李を横目で見る。

…こいつ、いつも一歩後ろを歩くよな。

何で隣を歩かないんだ?

足、遅いの?

それとも、俺、歩くの早い?




「…あのさぁ」

「…ん?な、何?」




歩く足を止める。

離れたその距離を詰めるように。



「おまえさ…今、すっげぇ頑張ってんのかもしんねえけどさ…」

「う、うん…」

「無理すんなよ」

「は、はい…」



…応援、とかそんなものは。

ストレートに表現すんのって、やっぱり照れ臭くて。

俺にはまだハードルが高い。



でも、だからと言って。

無理だ無理だと反発するのって、カッコ悪いし。

頑張っているのに、やめさせるのって、不毛な悪足掻きだとも思った。




受け入れる『覚悟』が、必要。




「でも、無理しない程度に、頑張れよ?」

「え…」

「だから…頑張れ」




この一言を口にするのに。

どれだけ苦悩したか。



俺だって、変わっていかなきゃいけないんだ。



桃李がきょとんとして俺を見ている。

うっ…らしくねえこと言ってんな?って、驚いているのか?

俺だってそう思うわ。

でも、ここで言っておかないと、しばらくモヤモヤしそうだから…。




「頑張る…」



俺を見ながら、ウンウンと頷いている。



「…頑張るっ!私、頑張るっ!」

「あ、そう…」



そして、またウンウンと頷き続けている。

首降り人形並みに。

な、何だ?

何だか知らないが、テンションを上げてしまったようだ。

ったく。

また、暴走しなきゃいいが。



「…言っとくけど!今日みたいにブッ倒れるとか、立ったまま寝るとかはもうやめろ!立ったまま寝てんの、気持ち悪いんだよ!」

「うん、わかった!もう立ったまま寝ない!」

「ホントか?今度やってたら、デコビンタすんぞ!」

「うん!わかった!」



やれやれ。

本当にわかったのか?

それは不明だが。





この先の将来、未来。

成長と変化を。

受け入れる『覚悟』を、持て。



追い掛けるために、走り出せ。









baKed.4 eNd
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