王子様とブーランジェール




かわいかったな…。

ニコニコしてて…。



しかも。

昨日、無意識に頭をポンしていたことに後から気付いた。

左手…神の手になったぞ。

気付いた時は、しばらくその手の平を見つめ続けてしまった。

胸キュンシーン、地でやってもうた…!



わたあめ機械運搬中にも関わらず、思い出し笑いをしてしまった。



「急に笑い出すとか、気持ち悪いな」

「…うるっせぇな!」



ヤバい。怪しく笑っていたのがバレた。

理人、何でも見てるな。気をつけないと。

気を取り直すように、咳払いをする。

だけど。

昨日のラブラブライフな時間を思い出すと、またしてもニヤケそうになってしまう。

あ、ダメだ。ニヤケたら、また理人に気持ち悪い扱いされるぞ。

でも、あれはよかったな…。

もしそれが、学校祭によるイベント効果なるものなんだったら、学校祭万歳だ。




わたあめ機械を教室へ運びこむ。

教室の中も、最後の準備で慌ただしくなっていた。

「…あれ?ここどうなってんの?…慎吾は?どこ行ったの!」

「ステージの確認に行ってるみたいー」

「もぉー。早く帰って来てってー!」

松嶋、探されてるぞ。

俺とは違って、アイツはお祭り男らしい。

クラスを仕切って引っ張って、イベントリーダーのようになっている。


すると、クラスの女子、桃李と仲良しの菊地さんがこっちにやってきた。

「竜堂くん、今度は備品が届いたみたいだから、また正面玄関口行ってくれる?段ボール二箱大丈夫?」

またすぐに用事を言い渡される。

「はいはい」

俺より身長が2㎝ほど高い理人は、今度は天井部分の飾り付けを頼まれていたため、伝票を持たされ、俺一人で教室を出る。

正面玄関口逆戻り。

やれやれ。でも、このぐらいしか出来ないもので、与えられた仕事はきちんと遂行しよう。

重たいものだったら、2往復すりゃいいか。



急ぐワケでもなく、お気楽に廊下をプラプラと歩く。

階段を降りきって、直線の廊下を歩いていたが。

そこには、教室で探されていた男がいた。



「…わかった!わかったっつーの!」

「本当にわかったのー?いつもわかったわかったっつって、わかってないでしょ?」



…え?女と一緒だ。

ラブラブ楽しそうに話しているというよりは、女が詰め寄ってきており、松嶋が嫌そうな顔をしている。

松嶋、あんな顔をすることもあるのか。

教室では、いつもヘラヘラしてんのに。



だが。

一緒にいる女子生徒も、知ってる顔…!



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