王子様とブーランジェール
果てには、どうぶつ警戒標識の絵も描いてしまった。
もう、三時間経つとどうでもよくなった。
そのクオリティの低いイラストを描いたうちわを渡す。
「はい、どうぞ」
うちわをイラストを加えて、持ち主に返す。
「わぁー!可愛いぃー!」
その女子は、口元に手を添えてぶりっ子ポーズをしていた。
やたらと女子力の高そうな女子だ。
髪はサラサラで綺麗なロングだ。
ちょっと…いや、大分ふくよかで、身長がある大女だな。
肉まんっぽい。
でも、品のある女子オーラを醸し出している。
女子力の高い肉まん。
「ありがとうございますぅー!夏輝様ぁー!」
そう言って、俺に顔を近づけてくる。
…って、何だ!随分とちか…。
…ん?
すげえ違和感。
…いや、『夏輝様』と、様付けで呼ばれたのも違和感たっぷりの困惑状態だが。
その女子のアップを見た時。
一瞬、ゾワッとした。
鼻の下の青いヒゲの剃り跡…。
「…え?」
「…え?」
その女子は「えへっ?」と、笑い返していた。
スマイルも自然で、品のある女子だ。
しかし…俺は騙されないぞ。
「…っていうか…男?」
「…え?」
「男でしょ?」
「えぇー?」
「いや、だから。男…」
「えぇー?ちがぁーうぅー!フリージアは女の子ぉー!」
フリージア…。
すると、そのフリージアは急にガクッとよろめく。
後ろに並んでいる女子にドカッと蹴られてしまったのを、俺は見てしまった。
け、蹴られた?!
「…フリージア!何一人だけ時間かけてんのよ!」
「夏輝様はみんなのものよ!さっさとどきなさいよ!」
「女子力高いからって、抜け駆けは許されないわよ!このおデブ!」
「やぁーだぁー麗華ちゃんー。そんなに褒めないでぇー」
その男子疑惑のフリージアと、女子三人が軽く俺の前でモメ始めた。
特に麗華という女子は、フリージアの腹の肉をギュッと引っ張りまくっている。
ち、ちょっと…!
って、この女。
「フリージアぁぁっ!この泥土俵女!さもなくばあんた!我が家のガス室にぶち込んでやるわよぉっ?!」
「えぇー。美容ガスにしてー?」
ガス室?
まさか、昨日の?
前夜祭の最前列にいた、ガス室女?
ガス室女…来た!