王子様とブーランジェール




ほぼ無視状態で、やっとこ女豹から逃れる。

こんなところで、タイムロスしてる場合じゃねえんだ。

走って走って、1階、2階のフロアも探す。

途中、先輩に絡まれながらも、探して探して探しまくる。



「竜堂、こんなとこで何してんの?」

「…あ、十津川さん」

2年のサッカー部の先輩、十津川さんだ。

2年1組の教室から顔を出している。

…だが。

そこには、手がかりにもなるかもしれない人物が、十津川さんの後ろから顔を出してきた。



「おぉー!竜堂じゃーん!」

「は?美梨也、知り合いなの?」

「殿様竜堂とは知り合いだぜー?」



巻き髪のど派手ギャル、美梨也だ。

狭山の仲間?手下!



「み、美梨也!狭山…狭山知らない?どこ?」

「は?狭山さん?何で?」

美梨也は首を傾げる。

「あ…ち、ちょっと…」

頭がごちゃごちゃしていて、説明が上手く出来ない。

だが、美梨也はこっちの様子を怪しむことなく、少し考えているようだ。



「狭山さん…体育館じゃね?」

「は?体育館?」

「後夜祭でやる家政サークルのファッションショーをお手伝いするって言ってたよ」

「え…」



狭山が?

ファッションショーに?



「…モデル?」

「さあ。よくわかんない。楽しみにしとけ!バカめ!って言ってた」



そうか。体育館…。




「…わかった。ありがとう」

「セイセイ。殺されるんじゃねえぞー?」



セイセイって何?



しかし、そんなの構ってはいられず。

体育館の方向へと足を向ける。



『全校生徒に連絡します。4時より体育館にて後夜祭が始まります。全員、速やかに体育館に移動してください』



校内アナウンスが流れている。

早くしないと、後夜祭が始まってしまう。

ショーが始まれば、お手伝いの狭山とは接触出来なくなるかもしれない。

早く体育館に辿り着かねば…!



その時、ズボンのポケットに入れていたケータイのバイブが鳴る。

こんな時に、誰?

ひょっとして、親父?



親父だったら放っておこうと思ったが、誰だかわからない。

取り出したケータイのウィンドウ、知らないケー番の通知が来ている。

だ、誰?



「…もしもし」



電話に出てみる。

だが、その相手とは…。



『…竜堂?…どこを探しておるこのバカめ!』



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