王子様とブーランジェール



それもこれも、桃李がバカだからだ。



…あ、いや。バカバカ言うのはなるべくやめようか。

このバカさに腹立つこともあれば。

…素直で、純粋で、ヘタに勘繰りを入れてこないから、こうやって救われることもある。



そして、学祭の時みたいに、いくら不安を抱えてビクビクしていても。

会って、話をすると安心させてくれる。



イライラさせられて、しょうがない時もあるけど。

やっぱり…おまえがいい。



おまえが、いいんだ。






「…あ、そうだ。夏輝におみやげあるよ?」



そう言って、桃李はスカートのポケットに手を入れる。

取り出したモノを手渡された。



「………」



手の平に乗っかったおみやげを見て、ビミョーな気持ちになり言葉を失った。

え…俺のおみやげ、これ…?

目の前の桃李もビミョーな表情になっている。

「あ、ごめん…さっき外で秋緒やお姉ちゃんたちに配ったら、これしか残らなくて…」

あぁ…俺のために買ってきたワケじゃなく、ごっそりテキトーに買ってきて、みんなに配った後の余り物ね…?

でも、これが残っちゃう?



エッフェル塔のモチーフ付きの。

ラメのヘアゴム三本セット。

黄色と紫色と黒。



まるで、小学生がつけていそうな飾りゴムだ。

なぜ、これが…!



「ち、ちょんまげ縛るのに、役に立たないかな…?」



桃李はごまかして、えへっ?と笑う。


俺に、これをつけろと?

…桃李、おまえぇぇーっ!!



…と、普段ならここで雷だが。



久しぶりに会えたし。

モノを貰っている身なので、やめておく。

もう、雷落としはやめたしな?



…いや、こんな女子小学生が付けていそうなエッフェル塔のヘアゴムでも。

桃李からのプレゼントは、ちょっと…いや、だいぶ嬉しいから。



「…あ、ありがとな」

「う、うん!」



たぶん、大切にしちゃう。



ヘアゴムを受け取って、自分のポケットに入れる。

桃李はうんうんと、なぜか高速で何度も頷いている。

え?何で今そんなに小刻みに頷いているんだ?

何で?





すると、ウッドデッキの方から「夏輝くん、ジンギスカンまだですか?!肉がありません!」と、秋緒のトゲのある声がした。

「…わかったっつーの!今持ってく!」


ちっ。邪魔しやがって。


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