王子様とブーランジェール

夏輝と迎え撃て!敵衆誘導討伐戦!









藤ノ宮と尾ノ上さんらで、緑ブレザーの連中を投網作戦(…)で捕獲。

緑ブレザーの素性がわかったところで、松嶋がその早瀬高校とやらについて調べた結果、奴らの目的がわかったとの一報が入った。



そんなワケで。

三時限目終了後にみんなで早弁して。

菊地さんと尾ノ上さんと家庭科室に向かう。



…だが。



「真奈ちゃん、美咲ちゃん!どこ行くの?」



その声にドキッとさせられる。

桃李だ…。



「あー…ちょっと」

「さ、狭山さんのところに行くんだよ?」



桃李に呼び止められた二人は、しどろもどろしている。

桃李にはこの件の話をしていない、か…。



「狭山さんとこ?夏輝も?一緒?」

「あ、うん…」

あまり多くは語れず、それしか言葉が出なかった。

だが、この空気読めない女は…。



「私も一緒に行くー」



二人がギョッとした顔をする。

残党の集まりに、桃李も?!…いやいや、ダメだろ。



二人は、一生懸命言い訳する。



「あ、あー…桃李はダメ…かな?」

「えっ!な、な、何でー?」

「あ、あの、ふ、負傷者はダメって言ってたよ?狭山さんが。これから相撲大会するから!女子だらけの相撲大会!り、竜堂くんが審判やるの!ミスターだから!」

「そ、そ、そう!桃李、おでこケガしてるし?ね?」

相撲大会?菊地さん、無理ある言い訳、よく思い付いたな?

女子だらけの?残党の相撲大会…?

考えただけでも、それはデッド・オア・アライブ。

自転車突っ込んできそうだ。

俺が行司やるの?あはは…。



「え、え、えーっ!こんなの何ともないよー!」


そう言って、桃李はおでこのガーゼを手でバッと隠している。

しかし、二人は首を振っていた。

「だ、ダメダメ。相撲大会は万全の調子で出ないと、ね?」

「2回目開催の時に呼んであげるね?ね?」

「ええぇぇ…」

桃李は断られてしょんぼりしている。

え?相撲大会、出たかったの?

もし出たとしても、力の無いおまえ、たぶん瞬殺だぞ?



「ご、ごめんね?桃李。…じ、じゃあ行こっか?」

「う、うん。そうだね?」

すたこらと逃げる二人の後に続いて、俺も一緒に逃げる。

桃李はしょんぼりとその場に立ち尽くしていた。



その姿は、ちょっと胸が痛い。

おでこのガーゼも…切ない。




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