王子様とブーランジェール




「皆さん、顧問と連絡取れました!始めますよ!」



菜月が家庭科室内にいる女子たちに呼び掛ける。

すると、何も言わずに女子たちが教卓の前にわらわらと集まってきた。

「それでは始めます」

昨日と同じくノートパソコンの画面をこちらに向けている。

ポーンと音が鳴ると、昨日同様の光景が映し出された。

人間の膝の上で、ポメラニアンのポン太がくつろいでいる。

あくまでも、顔出しはしないのか。



『やあこんにちは、デビル達。ここまで仕事が早くて優秀だとあのアホミスターも鼻が高いねー。素晴らしい』



顧問、もとい、酒屋の兄ちゃんだ…。

ポン太の頭を撫でているそのごつい手だけが映っている。



『今日から作戦に乗りだし、明日には解決。で、明後日の金曜日にはみんなで野球部の全校応援に行けるワケだ』



野球部の全校応援…そうだった。

野球部はただいま支部予選の真っ最中。うちの野球部は、見事にブロック決勝まで勝ち進んだ。
陣太もスタメン、正捕手で頑張っている。

これに勝てば、全道大会への出場権獲得。

金曜日、ブロック決勝で朝イチ円山球場で全校応援らしい。



『みんな頑張ってあげあげホイホイ歌ってきてね。さてさて始めよう。昨日の報告お願い』

「はい!」



菜月がタブレットを手にしている。

スクロールしながら、話始めた。



「まずは昨日のパトロールの結果です。我々残党と松嶋で手分けして捜索に当たったところ、犯行前に逃走されたのは2件、捕獲は3件でした」

「えっ!…3件も!」

思わず声が出てしまった。

驚いた…。

そんなに見つけて、そんなに捕まえちゃったの?

「律子と美咲がJR琴似駅、潤と奈緒美が地下鉄北13条東駅で、あと松嶋たちが地下鉄白石駅で、合計3件。うち2件はただの『兵隊』でしたが、琴似駅で捕獲したのは…緑ブレザーの連中でした。おかげさまで、昨日の被害報告は1件もありません。皆さんお疲れさまです」

教卓を囲んでいる女子たちは『おぉー』と拍手をする。

投網バズーカの賜物ですね。投網…。



「緑ブレザーの三人を捕獲しましたが、江別市の早瀬高校の連中とわかりました。ですが、内部事情、うちの高校やミスターを狙う理由に関してはなかなか口を割らず、こちらとしても苦戦しました。現在もエリんちの自社ビルの地下に監禁中です」



だから、犯罪…やめて!



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