王子様とブーランジェール




顎を狙ったバットを下ろして「あははは!」と、またしても高笑いの嵐だ。



こいつ…鬼だ。

女子なのに、男顔負けのスイングスピードだし。

これはもう、ヤクザ半殺しも納得だ。




不良どもは、今の狭山のスイングでフリーズしかけている。

狭山はヤバいヤツだということを、目で見て理解したしい。

後退りを始めているヤツもいた。




「…我々は、三流愚連隊ごときに負けることは、ないからなぁ?あぁ?」




すると、またしても群衆の向こうで「うぁっ!」と、うめき声が聞こえた。

と、思ったら、不良どもの一人が宙に浮いてぶっ飛んでくる。

俺の目の前にバーン!と落ちてきた。




「ケンカを前に敵前逃亡はなくなーい?」

「だって私達、女子だよー?」




そう言って、互いに笑い合いながら歩いて、ゆるーく登場した。

奈緒美と潤さんだ。

まさか、このぶっ飛んできたヤツ、逃げようとしたところをやっちまった感じ?




「…な、何だこの女たち!」

「何か気持ち悪ぃぞ!」

「ひ、退くぞ!総長のところへ!」



女子の強さという違和感を感じて、この場から退こうと逃げ出す輩がちらほら現れた。

だが、そんな奴らの前に立ちはだかる。



「…逃げる気?逃がさないよ!」

「今、いいとこー!でしょ?」



木刀を持ち構えた藤ノ宮と、なぜか薙刀を持った美梨也だ。

奴らの前に出るなり、自分たちの持っているマイ武器を振り回して逃がさない。

奴らの退路を断つように。




「おーい慎吾!もう暴れていいのー?」

「………」

「…奈緒美姐さん!足キレイ!パンツ見せてえぇぇっ!」



紋中の凶悪ヤンキーである松嶋のお友達、パンツ星人・他二名。

だらだらしながら歩いてやってきた。

「いいぞー!」と、松嶋が手を振ると、「おけまるー」と返していた。






…これが、第三撃。

定置網にも投網にも引っ掛からずにいた輩は、腕っぷしの強い猛者たちで、直接叩き潰す。





次々と現れる敵やトラップに対し、半ば混乱しているのか。

奴らのさっきの威勢はすっかり消え失せており、ただ立ち尽くし、無言で俺達を睨み付ける。

闘争心はまだ消えてないようだ。




しかし、とうとうだ。

いよいよこいつらを叩き潰せるチャンスが来た。




「…おまえら、覚悟しとけ?」



立ち上がり、松嶋より前に出て奴らに言い放つ。



「…全員、皆殺しだ!!」









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