王子様とブーランジェール




なぜ、おまえがここにいる。

…ではなく、山田フリージア。

なぜ、おまえは魔神ブーとなった?

見てくれのせいだけで、魔神ブーと化してしまったと思われる。




だが、突然の登場は山田だけではなかった。



「…あーら?北海道にはゴキブリがいないはずなのに、なぜ生息してるのでしょうか?」

「フリージア、ゴキブリ星人倒せんじゃない?」

「宇宙にでも飛びだたせる?」

「マジ迫力あり。ゴキブリファイター」

「もぉー。みんな褒めないでー?」



山田の後ろに、ズラリと登場。

小笠原麗華と、その愉快な仲間達の鈴木さんと金村さん。

そして、ニューカマーのバヤセ姫。

…本当に、この高校に転校してきてしまった。

金髪は黒く染め直し、カラコンもやめてしまい、今となってはただのキレイ系な女子となっている。




「何でおまえらがここに…!」

俺の問いに全員、『夏輝様、ごきげんよう?』と返している。

答えになってない!

今度はこっちが混乱絶頂だ。

しかし、まともに答えて貰えなかったその問いは、代わりに狭山が答える。



「私が頼んだのだバカめ!…いろいろあってな?」



いろいろ?!…って、何。

と、聞き返そうとしたが。



狭山が、ふと、B教室の方を指差す。

そして「行け!」と、ジェスチャーしている。



…あ、そうだった!

桃李が!



ドアの小窓を覗くと、教室のまん中には女子が…数えて四人。

どれも、何となく顔を見たことある女子だ。

その女子に囲まれるように、真ん中には桃李がいる。

頭を抱えてしゃがんでおり、女子の一人に足蹴にされていた。



「ホンっト、ムカつくな?!面白くない!」

「泣きもしないし、何も喋んない!おまえは貝か!」

「腹立つー!このスカしてる感!自分が竜堂くんの彼女だと思い込んでいて、私達を見下してるとか?!まさかまさか!」

「有り得ないー!ストーカーもいい加減にしたらー?彼女だっていうの、ただの思い込みだから!いい加減気付け!」

「自分はモテるとか思ってる?ちょっと可愛いからって自信過剰じゃないー?あんたがミスターの彼女になるとか、ないから!」



罵声と共に、全員で次々と桃李を足蹴にしている。

だが、桃李は頭を抱えてしゃがんだまま、何も言わずにじっと黙っていた。

ぐっと目をつぶって、耐えている…。



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