王子様とブーランジェール



「もう、今後一切あなたとはありませんから。この教室にも来ないで下さい」

「ち、ちょっと待ってよ!じゃあ、セフレ?でも構わないから、ね?」

「………」

今度はこっちが絶句だ。

この期に及んで、セフレ?

何言ってんのこの人?

ね?で、済むような話じゃねえし!

この人、もう重症だ。

狭山の言っていた『色情魔』ってのも、あながち例え話じゃない。



「…好きな人いるんで、勘弁してください。誤解されたら困る。もう今後一切教室にも来ないで下さい」



最後は一方的に告げて。

相手の反応は見ないで、ドアを開けて教室の中に戻る。

姿を見ないよう、ドアを再びピシャリと閉めてやった。



ふざけんなよ。

もうビッチ丸出しじゃねえか。

あの夜の事がマジで悔やまれるわ。



大きく、息を吐いた。

っとに、マジで、疲れる。

さて、これで引き下がってくれると良いのだが。



顔を上げると、そこには桃李が立っていた。

盗み聞きをしていたヤツが。

俺と目が合うなり、泣きそうな表情になった。



「あ、あぁぁ…な、夏輝、ぬ、ぬ、盗み聞きしてごめんなさい…」

怒られると思ったのか、びくびくしている。

…そんなにビビってくれるなよ。

逆に傷つくじゃねえか。


「…このバカ」



この先もそうやって、強がりを言って、同じように生きていくのか?

それは、もうやめた。



だけど、俺は結構不器用で。

すぐにはやめられないっていうのも、自分なりに何となくわかっている。




「別に…いいよ」



でも、不器用は不器用なりに。

不器用な愛を掲げながら。

ずっと駆け抜けていくしかない。



とりあえず、今はそこまで。



「…夏輝、あの…」

桃李が俺の顔色を伺いながら、言い出しづらそうに聞いてくる。

何だよ。モジモジしてんな。

何聞きたいんだよ。



「何」

「新しい彼女さんと…ケンカしたの?」

「…はぁぁっ?!」



新しい彼女さんと…ケンカ。



盗み聞きしてたくせに。

話、聞いてたか…?



イライラボルテージが一気にMAXへと到達した。



「…ふざけんなよコラァ!!」

「ひいぃぃっ!ご、ごごごめんなさいぃっ!」



ここぞとばかりに声を荒げた。

新しい彼女だと?

何でそんなことになる!

しかも、好きな女にこのセリフを吐かれる俺、いったい何?

どんな仕打ち?!



桃李は俺に怒鳴られ、一目散に逃げ出し、黒沢さんのところに避難している。

黒沢さんは冷静に「また竜堂くんに怒られたの?」と、対応していた。



「まーた雷落ちた」

「竜堂サンダーだな。こりゃ」



理人がいつの間にか、陣太と一緒にいて、こっちを見て笑っている。

あのなぁ…。



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