王子様とブーランジェール



中学生になってからは、顔を合わせると挨拶をする程度だった里桜ちゃん。

しかし、この時期になって、なぜ急に私のところへ頻繁に顔を出すようになったのか。

最近、目的が何となくわかってきた。



『桃李ちゃん見て見てー!夏輝くんお土産くれたのー!』



里桜ちゃんが嬉しそうに私に見せびらかしてくるのは、パンダのキーホルダー。

あー…中華街で買っていたやつだ。



『里桜嬉しいー!絶対大事にするー!』



そう言って、里桜ちゃんはそのキーホルダーに頬擦りをする。

余程嬉しいんだね。

『よかったね…』

里桜ちゃんのテンションに圧倒されてしまい、苦笑いをしてしまう。

すると、パッと真顔になり、私に顔を近付けてくる。

『…ねえ?…夏輝くん、他の女の子といいカンジになったりしてなかった?告白されてりしてなかった?』

『え…べ、別に何も…』

『そう?…あの、古嶋心菜って女、夏輝くんのこと狙ってるって噂だし、自由行動一緒だって聞いてたから不安だったのー!』

『だ、大丈夫だと思うけど…わかんない』

『でも、何も無いならよかったー!桃李ちゃんありがとー!』



…里桜ちゃんは、夏輝のことが好き。



まあ、昔から幼なじみ同士だし。

秋緒や理人にディスられてばかりの里桜ちゃん、よく夏輝に庇ってもらってたりしたから、夏輝にはよく懐いていた。

昔から好きだったとはいうけど。

最近、夏輝が一段とカッコよくなった姿を見て、とうとう『夏輝くん大好き!』『彼女になりたい!』と、本気になり始めた。

で、同じクラスになった私に、夏輝の様子を聞きにくる。



『もぉー!夏輝くん、超カッコいいー!この間帰り見かけたから一緒に帰ったのー!家まで送ってくれたー!里桜、女らしくなったって言ってくれたの!きゃー!夏輝くんも筋肉ムキっとしてるし、背も高いし、何たってイケメンだもーん!大好きー!』



それと、夏輝との話を誰かに話したいんだと思う。

秋緒の話によると、里桜ちゃんはあまり友達がいない。

このテンションの高さ、自由奔放な性格のせいだろうか。

良く言えば、素直で元気いっぱい。

悪く言えば、周りを気遣わないワガママの自己中。

思ったことをストレートにズバッと言ってしまうため、周りに距離を置かれているようだ。

たまに、ぶっ飛んだことも言ってしまう。

話を聞いてくれる人があまりいないから、私のところに来るのでは…と、いうことだった。



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