恋する剣士
紅葉が色づき始めた時から
随分と消息が掴めず

皆が心配していた


「羨ましいんちゃう?」

酒好きという話を聞いていたから、茶化してみる


明は、山崎へ視線をやることなく
ゆっくりと左手を伸ばす



「掴めそうなのに、掴めないから羨ましいと想うんだろ
何も掴めないとわかっているから
羨ましいと思ったことがない」


ぽそぽそと喋る明をジッと見る


ーーー元気ないやんか…


「なんや?力になるし、言ってくれ!」

明が左手を戻しながら、掌を見る


「そういえば、何かを欲しいと思ったこともないな…
この手に掴めるものなんてないし
ふふっ でも、失うものもないから良いことかもね」


言っている意味を考える


「はぁ~面倒くさい! 烝君、またね!」

「は?ちょ、待ち!!今、どこにおんねん!!
あー、いってしもた  皆… 心配してんねんで?」


明が消えた方角を見つめ
宴へ視線を移す

原田と永倉が上裸で踊っていた


ーーー何してんねん!!!



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