星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
 でも、時の流れはいつも無情で。

 気付くと外はすっかり暮れ、夏の星が瞬いていた。


「ごめん!つい夢中になりすぎた」

「全然いいよ。ていうか…ホントはもっと聞きたい」

「そんなわけにはいかないよ。
 うわ、ヤバイな、もう8時じゃん」


 そう言って先生はまだ手元に散らばっている本や資料をまとめ始める。


「南条、ちょっと待って。遅いし、一緒に帰ろう」

「え…」

「家どこだ?駅から遠いのか?」


 先生と二人で下校…
 しかも先生、送ってくれる気だ…


「だっ!大丈夫!駅から近いしっ!!」

 先生、忙しいのに迷惑かけられない。


「俺が引き留めちゃったからさ。南条に何かあったら俺の首飛んじゃうから、送らせて?」

「……」

 夢みたいな申し出にすぐに言葉が出ない。


「それに…」

「……?」

「そしたらもうちょっと喋れんじゃん?」

「え…」


 私がもっと聞きたいって言ったから?

 私の顔を覗き込む先生の鳶色の瞳はまだ輝いたままで…


 先生が楽しそうだと私も楽しいの。

 今この瞬間、先生と私、同じ気持ちでいられる。

 こんな嬉しいことないよ…


 ねぇ、先生。


 今私、どうしようもなく


 先生が…好きだよ─


        *   *   *
< 48 / 316 >

この作品をシェア

pagetop