星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
5月~英語準備室
 ゴールデンウィークが明けたばかりのある日。


 先生と先生を取り巻く女生徒たちとすれ違いざまに

「先生、授業の準備っていつも家でやってんの?」

なんて声が聞こえてきた。


 無意識に耳を澄ましてしまう。


「いや、英語準備室が多いかな」


 英語準備室?
 英語教室の隣のところ、だっけ?

 本校舎1階の奥から2番目の部屋が英語教室。
 更にその奥の小さな部屋が英語準備室になっている。


(英語教室…?)


 思わず立ち止まる。

 私はふと映研─映画研究部に入っている揺花の顔が浮かんだ。
 映研の活動場所は英語教室だ。
 英語教室は大型のプロジェクタースクリーンや最新鋭のAV機器が揃っているため、映研はここで活動しているらしい。



「揺花、私も映研入ろうかな?」

「え?舞奈が?」

 放課後の教室で、私の唐突な言葉に揺花が甚だ驚いた顔をする。


「高3で今から?」

「指定校推薦取ろうと思って。そしたら部活入ってた方が有利でしょ?ほら、私帰宅部だから」


 もちろん嘘だけど。


 結局そうして私はその日のうちに映研に入部した。


 正直頭の中の冷静なもう一人の自分が

「何やってんの?」

と突っ込んだりもしたけれど、受験や将来のこともどこか投げやりな気持ちになっていた私には

『なんとなくそうしたい気分』

というだけで十分な理由だった。

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