星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
 脱線を戻そうと先生がひとつ咳払いをして夜璃子さんに話し掛ける。


「ところで夜璃子、今日何時の電車で東京帰るんだ?」

「一応9時前の予約してるけど。別に気にしないで?まだ切符受け取ってないから終電までずらせるし」

「いやいいよ」

「なんなら明日休みだし昴んち泊めて貰えるなら明日帰るわ」


「……」


 やっぱり、そういうことだよね…?

 自分の瞳が熱く潤んでくるのが分かる。
 零れてしまう前に、逃げ出したい…


「もうそういう学生ノリ、マジ勘弁して…
 あ!南条、誤解すんなよ…って、おい!」


 私は席を立ち上がった。


「あの…私…明後日模試あるんで…そろそろ失礼します。
 ありがとうございました」

 私はお辞儀をして、スクバを肩に掛けながら走って店を出た。


「南条ちょっと待て!送るから!!」

 先生の声が追ってきたけど私は行き交う人混みに紛れるように駆け込んだ。


 先生と夜璃子さんは私が帰った後ふたりの時間があるんだもの。

 邪魔しちゃダメだ。

 私は先生の生徒だもの。

 プライベートまで付きまとっちゃダメだ。


 視界がぼやけ、涙が溢れそうになる。

 でもこんな所で泣いちゃダメだ。

 人にぶつかっちゃう…


 私は耐えて耐えて耐えて…

 自宅の自分の部屋まで必死に涙を耐えて帰路を辿った。

       *   *   *
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