ツンデレな後輩なんて99.9%好きにならないから!
第二章 交差する気持ち

誘いの言葉




あたしは、長袖をたくしあげ薄っぺらい汚い雑巾を掴んで、
水道で濡らす。

やっぱ、こんな暑いと水もぬるいなぁ…。

ぎゅっと、力いっぱい雑巾を絞り、テントの棒を拭く。


「珍しく早いな!」

作業する後ろから声をかけられて、振り替えると
部長の神宮寺 時雨(じんぐうじ しぐれ)がいた。
時雨は、
サッカー部の部長であり将来をメディアにも期待されているトップクラスの実力者だ。成績も学年トップ。
家もかなりお金持ちらしく、外車が彼のことを送り迎えしているのを見かけるし、別荘もを国内外に多数あるなど。聞き出したらドン引きレベルの、裕福さだ。
そして、身長180センチ。茶色い髪のオールバック。
なによりも恐ろしいほど顔がいい!
広瀬や雪代くんなんて比じゃないくらい、
顔が整っていてはっきりとした目鼻だち二次元から飛び出してきたのかもしれない。

女子の間では、彼と三秒以上目が合うと必ず恋に落ちると言われている。

性格はかなり、上から目線というかプライドが高くて自信家で自己主張が激しい。
そういう、俺様ぽい性格を好む女子も多いけど、気の強い涼香とは、1年の時から
よく揉めている。
でも、意外とチームメイト思いで、リーダーシップがある悪いヤツじゃないってことは私も涼香もわかってる。


「時雨!おはよう。時雨まで広瀬みたいなこと言わないでよね!
あたしだって早起きくらいするし!」

あたしは、作業の手を止めないまま反論する。

「ふん。よくそんなこと言えるな」
と、鼻で時雨が笑う。そして、腕を組み学校の壁に寄りかかった。

そんな、時雨を横目に私は、雑巾でササッと鉄の棒を磨く。

「お前、今日なんかいいことあっただろ?」

からかうように言ってきた。

さすが、時雨よく見てる…。
後輩に慰められたとか言えない…。


「ちょっとね!内緒!」

そう言いながら、拭き終わったぞうきんを洗う。
すると、時雨はゆっくりと壁から体を起こし、

「まーいい。行くぞ」

と、棒を片手で担ぐとあたしを置いて歩き始める。

「待ってよ!てか、もしかして、これ運ぶために私が拭くの待っててくれた?」

部長である時雨は、忙しい。なのに、壁にもたれ掛かりながら何気なく
あたしを待っててくれたんじゃないかなと思い、慌てて聞いてみる。

すると、当たり前のように

「男が重たいものを持つのは当然だろ?」

なんて、サラリと言ってしまう。
時雨は、少しキザなセリフとかも簡単に言うし、
俺様に見えて基本はレディーファーストだ。たぶん、祖父がヨーロッパの人で
小さい頃そこで育ったと言っていたからそのせいだろうか。

「ほんと、心までイケメン!その毛穴のない肌剥ぎ取りたい!」

あたしは、横に並び冗談を言いながら時雨の顔を覗きこむ。


「まーな。だが、俺だって毛穴くらいはある。」

ちょっと、あきれたように言われあたしを見てきた目と目が合う。



1.2.3







3秒目が合った。




「知ってる?時雨と目が三秒以上合うと恋に落ちるらしいよ」

あたしが、目をそらさずに言う。

「で、お前は落ちたのかよ?」

時雨はニヤリと微笑みながら試すようにに言った。

…。








シンッと辺りが静まり返り

あたしは、口を開いた。















「全然。相変わらず綺麗な目だな。このイケメンめ!って思った。」




「ははは。落ちなかったか。そりゃ残念だ。」


時雨は楽しそうに笑っている。



セミの声を遠くに聞きながら、あたしは気合いを入れ直す。
よし!今日も練習頑張りますか!



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