ツンデレな後輩なんて99.9%好きにならないから!

帰り道





部室に入ると、すでに部活のジャージから制服に着替えた涼香が

「花凛ごめん!これから、担任と進路相談があるから先行くね!鍵よろしく」

涼香は、部室脇のベンチに鍵を置くと、白いスポーツ腕時計を見て

「あ、やば!時間過ぎてるわ!」

とか、言いながら慌てたようにパタパタと部室から出ていった。

ジャージから着替えるのめんどいな…。
このまま、帰ろ!

あたしは、備品の確認と部室にある窓の施錠だけして部室をあとにする。

はぁ。進路相談か…。
もうそんな時期か。あたし達高3だもんな…。
正直、あんまり将来のことなんてよく考えられない。
もう、3年の夏だしセンターに向けて勉強してる子もいる。

春の大会で部活引退してる部もあるしな…。

なんて、考えながら鍵を返しに職員室に行くと、
中で真剣な顔で先生となにかを話してる
涼香の姿がチラリと見えた。

鍵を返して、のんびりと校門へ向かう。

「リンちゃん!お疲れ」

校門の壁寄りかかっていた、郁斗があたしに笑顔を向けてきた。

「郁斗!?どうしたの?」

あたしが、郁斗に駆け寄って言うと

「かわいいリンちゃんに会いたくなっちゃったから!」

とニコニコしながら言われる

「はい!キモい!そういうのいいから!早く帰るよ!」

と、歩き出す。

横にならんで歩く、
郁斗がさりげなく私の部活用の手持ちかばんをスッと持ってくれる。

「で?ほんとは、どうしたの?」

あたしが、郁斗を見上げながら聞くと

「ん?リンちゃんが話したいことあるってメールで言ってたから、
なにかあったのかと思って。」

「そのためにわざわざ?」

「いや、買い物ついでにリンちゃん部活終わる時間だったから
学校に寄ってみただけ」

絶対嘘だ…。買い物袋なんて持ってないじゃん。

郁斗は、昔からあたしの事を気遣ってくれる。
あたしが、気にしないように買い物なんて言ってわざわざ…。

「ありがとね」

あたしが、お礼を言うと郁斗はなぜかじっとあたしを見つめて、
すぐに、我にかえったように

「愛しのリンちゃんのためですから」
と、音のしそうなほどアイドル級のウインクをわざとらしくしてくる。

「はいはい。そうですかー。」
と、それを受け流しながら歩く。

「ひどいなー。それで?リンちゃんはなんの話があったの?」

顔を覗き込むように聞かれ、

「あの、手紙は大丈夫じゃなかったんだけどね」

フッと頭のなかに広瀬の顔が浮かぶ。


「でも、もう大丈夫になった!
あたしはあたしらしくって言われてスッキリしたし!
だから、せっかく相談に乗ってくれようとしたのにごめんね。」

あたしが、笑うと

「なんだそれ」
と、郁斗が苦笑する

「でも、花凛が大丈夫ならよかった。」

と、ふわっとあたしの頭を撫でてくれた。
でも、それ以上なにも聞いてこない。それも郁斗の優しさなのかな。


二人で並んで、学校からの大通りを抜け、小さな商店街の中を通る。
小さい頃からよく、この商店街に二人でおつかいに来ていた。

「よう!花凛ちゃんきょうもべっぴんさんだねー。」

と、野菜屋さんのおじさんに声をかけられる。

「おじさんありがとう!今度イチゴ買いに来るね!」

あたしは、小さい頃からここのアイドルだった。

「2人は付き合ってんだろー」
と、おじさんがからかってくる。

「そうでーす。」
と、郁斗が勝手に答え始める。

「は?違いますよ。」

と、すぐに突っ込む。

「仲いいなぁ」
と、おじさんは楽しそうにしていた。

「それじゃあ、また。」とおじさんに挨拶をしてから商店街を抜ける。

「もう!勝手に答えないでよね!付き合ってるって噂になったらどうすんのよ!」

郁斗の背中をバシと叩く。

「俺は困らないけど」

「あたしが困るわ!」

昨日の、山田ってやつが言ってた噂を思い出す。

これ以上変な噂たてられるなんてごめんだ。

それに、郁斗は不特定多数の女の子と遊びまくってる。
そんな噂たったら、女の子達になにされるかわかんない。

商店街から、郁斗の家のほうが近い。

すぐに、
郁斗の、大きな家の前が見えてくる。
郁斗の家は広い。というか、大きい。
うちの学校は私立だし、時雨みたいな超お金持ちが通うくらいだから、
かなりセレブ率は高い。雪代くんとか広瀬みたいに。
郁斗もその1人だった。

「リンちゃんのこと、送っていくよ」
と、言われたけど郁斗からもってもらっていたバックを奪いながら、

「大丈夫!」と、断る。

「そっか」
と、郁斗は悲しそうに目を細める。




あたしは、知っている郁斗がなんでこんな、顔をするのか。

なんで、不特定多数の女の子と遊ぶのか。


だから…


あたしは、郁斗に近づき背伸びをする。
かかとが浮いたぶん郁斗の顔が近づく。


そっと、手を伸ばして郁斗のおでこを撫でた。

「そんな、顔しないの!じゃあ、また学校でね!」

と、郁斗から離れにっこり笑うと

郁斗は、少し困ったような顔で微笑んで手を振ってくれた。
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