次期社長と訳あり偽装恋愛

『ほら見てごらんなさい!だから机の整頓をしたらって言ってたでしょ』という言葉が喉まで出かかった。
でも、今はそれは後回しだ。

友田さんは顔面蒼白でパニックになっている。
ふと、友田さんの机の上のパソコンを見ると、USBが差し込まれたままになっていた。

ちょっと待って、落ち着いて考えてみよう。
友田さんは一度資料を作成している。
多分、会議で使う資料はUSBに保存してあるはずだから資料を作り直すことは出来る。
パニックになっているから、そのことには気付いていないのかも知れない。

「友田さん、会議に使うデータはUSBに保存してあるんだよね?」

私の問いかけに自分のパソコンを見てハッと気付き、何度も頷く。
よかった、それなら大丈夫だ。

「だったらもう一度作り直せばいいじゃない」

「でも、間に合わないかも知れないし……」

「何言ってるの。間に合わないかも知れないじゃなくて間に合わすのよ。私も手伝うから。ほら、泣いている場合じゃないでしょ」

壁に掛けてある時計を見ながら逆算する。
今は十三時十五分、会議は十四時から。
早めに会議室に来て資料に目を通す人もいること考えて、十五分前までに資料を作って持っていけば間に合うはず。
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