次期社長と訳あり偽装恋愛

今はまだ十七時前。
約束の時間まであと一時間あるけど、荷物を家に置いてくるのは面倒だ。
それに、そんなことをしていたら時間だってギリギリだ。
私が座ってるベンチには、今日の戦利品の袋が三つ。
家に帰ってそれらを開けてニヤニヤしたかったんだけどお預けか……。
時間になるまでベンチでボーっとすることにした。

***

「あっ、梨音!こっちこっち」

十八時前に駅の銅像に向かうと、すでに玲奈が待っていて大きく手を振っていた。

「ちょっと、どういうこと?」

「急にごめんね。どうしても梨音にお願いがあって。早速だけど来て欲しいところがあるの」

そう言うと、私の腕を掴み歩き出す。
訳も分からずに歩いていると、玲奈はある店の前で足を止めた。
和風建築の外観のお洒落な居酒屋だけど……。

「この店に何の用?」

「ホントごめんね。今から合コンがあって」

「は?合コン?」

耳を疑い、素っ頓狂な声が出た。
私の怪訝そうな表情を見て、玲奈が眉を下げる。

「急に体調不良で合コンに来れなくなった子がいてどうしようかと思ってたの。それで、私がこの合コンに賭けていることを知っているのは梨音の他にはいなかったから電話したんだ」

「だからって急に言われても私だって困るよ」

手荷物たくさんあるし、普段着だし。
しかも、合コンなんて一度も行った事がないし。
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